令和7年の相続税路線価が公表されました
—— 福岡市の地価動向と今後の相続対策を考える ——
令和7年の相続税路線価が、国税庁より公表されました。
最新の路線価図などの情報は、以下のリンクよりご確認いただけます。
今回の発表によると、福岡市は東京・沖縄に次ぐ全国第3位の上昇率を記録しており、
地価の上昇傾向が続いていることが明らかになりました。
このような路線価の上昇は、不動産の資産価値が高まるという意味で、
古くから不動産を所有されている方にとっては喜ばしいことかもしれません。
しかしながら、先祖代々引き継いでいく土地をお持ちの方にとっては、
将来の相続税負担が重くなる可能性があるため、手放しでは喜べない側面もあります。
路線価とは? その見方と活用方法
路線価とは、相続税や贈与税を計算する際の基準となる土地の価格で、
「時価」のおおよそ8割の水準で評価されるのが一般的です。
例えば、ある土地の路線価が32万円/㎡だった場合、32万円 ÷ 0.8 = 40万円/㎡程度が実勢価格の目安となります。
このように、路線価を0.8で割り戻すことで、1㎡あたりの想定売却価格を推測することが可能です。
また、地価動向を正確に把握するためには、過去の路線価と比較することも重要です。
前年比・前々年比など、3年程度の変化を確認することで、地価の上昇スピードや傾向をつかむことができます。
元税務署の先生からの情報提供
先日、鹿児島の鈴木先生(元税務署職員)が来所されました。
鈴木先生は、税務署時代に資産課税部門で勤務され、路線価の作成にも関わっていた方です。
当日は、以下のような貴重な情報を共有していただきました。
路線価は公示地価以外にも、税務署が定める「基準点」が用いられる
将来的には、紙の路線価図ではなく、Googleマップのような地図形式に移行する(令和9年より)
税務署側からの視点と、私たち納税者の立場とを照らし合わせて、正しい情報をもとに、
将来の相続・贈与に備えた戦略を立てることの重要性を再認識しました。
法人化や資産構成の見直しも視野に
これまで私は、建物のみを法人名義とするスキームをご提案してまいりましたが、
現在では土地についても法人所有への移転を検討し始めています。
相続税評価では、実勢価格の8割で評価されるという「アドバンテージ」があります。
しかしながら、もし路線価が毎年6%ずつ上昇していけば、
数年で評価額が実際の売却価格を超えてしまうという逆転現象が起こる可能性もあります。
このため、福岡市の地価が今後どこまで上昇するかを予測しながら、
資産の組み替えや所有形態の見直しなど、より柔軟な対策が求められます。
相続対策の新たな方向性
地価上昇に伴う相続税の増加を前提に考えると、「建物を建てるだけ」の
旧来型の相続対策では対応しきれないケースが増えています。
そこで必要なのが、多面的かつ戦略的なアプローチです。
法人化による資産移転
家族信託の活用
不動産の有効活用や新規取得
不要資産の早期売却
次世代の価値観や希望を反映したプランニング
相続対策は、「財産を残す」ことだけでなく、「次の世代とどのようにつなぐか」を
意識した総合的な視点が不可欠です。
なお、8月には某ハウスメーカーにて、
「成長・発展を続ける福岡市で再度相続対策を見直す」というテーマのセミナーを
企画しております。
この講演をベースに、さらにお客様にとって実践的で役立つ内容を
わかりやすくお届けできればと考えております。
最後に
令和7年の路線価をもとに、皆様の資産状況に応じた
相続税シミュレーションを行い、最適な税務環境の整備をお手伝いしてまいります。
最新情報は、随時ブログやセミナーにて発信いたしますので、ぜひご注目ください。
令和7年7月1日 税理士 高島聖也