私も独立して10年が過ぎ、
近年は、生前に対策を講じていた方の
相続税申告を担当させていただく機会が増えてきました。
独立当初から、「生前の相続対策」に力を入れていこうと決めていたのは、
相続が発生した後にできる節税や対策は、
生前に元気なうちにできることの10分の1にも満たないと
感じていたからです。
計画的な暦年贈与や、相続分・遺留分を考慮した遺言書の作成、
相続税対策など、さまざまなお手伝いをしてきましたが、
相続対策には相続税申告の10倍のスキルが求められると実感
しています。
というのも、申告は「起きた事実の処理」ですが、
対策は「未来に動くものを捉える力」が必要だからです。
特に不動産賃貸経営をされているご家庭では、
相続という課題だけでなく、
賃貸経営の継続という観点からの支援も欠かせません。
入居率の改善、経費削減、キャッシュフローの見直し、
後継者の育成、経理体制の構築など、多面的な経営支援が求められます。
弊所にご相談いただくケースの多くは、
もともと記帳代行のみを依頼されていた方が、
「このままではまずい」と感じてご相談に来られるパターンです。
たとえば、金融機関や建設会社に勧められて不動産経営を始めたものの、
将来に不安を抱えておられる方々です。
そうした方に対し、経営支援と並行して相続対策を進めていきます。
具体的には、土地の共有状態を解消するための共有物分割、
将来の財産の行き先を明確にするための遺言書の作成、
それを補完する家族信託などをご提案してきました。
かつて元気だったお父様が認知症を患い、
その後、お孫さんの事業用物件を信託を受けた
お子様名義で建築するというような事例もあります。
相続税申告を通じて、数多くのご家族の「幸せのかたち」に
触れてきました。
家族の数だけ、それぞれのストーリーがあり、
その幸せを実現するための道筋を一緒に考えることができる仕事
—それが税理士という職業なのだと、あらためて感じています。
地価が高騰する福岡市。人口は増加傾向にありますが、
それは主に65歳以上の高齢者が占めています。
人は老い、やがて亡くなる。その連鎖は、必ず訪れる未来です。
10年前に出会った60代の方が、今では70代になっています。
「今できる対策」を、今、全力で考える。
それは私一人ではできません。
これからも多くの方の力を借りながら、最善のサポートを
続けていきたいと思っています。
令和7年8月19日 税理士 高島聖也