こんにちは。税理士の高島です。
今日は「家賃アップ」についてのお話です。
先日、不動産オーナー様と座談会を開いたのですが、
その中で印象的だったのは、こんな声でした。
「経費は増えているけど、家賃はなかなか上げられないんですよね」
「思い切って家賃を上げたら、意外とスムーズに受け入れられました」
実は家賃アップは、単に「収益を増やすため」ではなく、
もっと大切な意味があるんです。
1. まず「目的」を明確にする
なぜ家賃を上げるのか?
その答えはシンプルで、建物を適切に維持管理し、地域で選ばれる不動産を維持するためです。
ニュースでは「家賃が1.5倍に」という見出しも目にしますが、
急激な値上げは入居者にとって大きな負担です。
だからこそ、不要な値上げではなく、「何のために必要なのか」を
整理することが大切なんですね。
2. 目標は「地域で選ばれる不動産」
目的が見えたら、次は目標です。
目標は、地域で選ばれ続ける物件であり続けること。
そのためには、数字も意識する必要があります。
修繕費や火災保険料、固定資産税など、経費は
確実に増えています。
「最低限の収益確保ラインはいくらか?」を把握しておかないと、
長期的な経営は難しくなります。
3. 経費の増加を正しく把握する
たとえば火災保険料。以前は30年契約も可能でしたが、
今では最長で5年になっています。それでいて保険料は以前より高額に…。
以前:10年で100万円(年間10万円)
現在:5年で200万円(年間40万円)
この差、なんと年間30万円。
仮に30戸の物件なら1戸あたり年間1万円、月額で約833円の増加です。
つまり、1戸あたり833円家賃を上げないと、保険料分が吸収できない計算になります。
「ローンが終わっているから余裕がある」「他の物件でカバーできる」という場合は
無理に値上げしなくてもいいでしょう。
でも、新しく経営を始める方や、利益率がギリギリの物件では、
この見極めが非常に大切です。
だからこそ、物件ごとの損益をしっかり把握する仕組み、
つまり「物件別会計」を整えることが重要になってきます。
4. 入居者に納得してもらう工夫
さて、いざ家賃を上げるとなったときに大切なのが「入居者に納得してもらえる工夫」です。
ただ「経費が上がったから」と伝えるだけでは納得されません。
でも、こんな改善を加えると話は変わってきます。
インターネット無料化 → 若い世代に人気で、入居の決め手になりやすい
宅配ボックスの設置 → 共働き世帯や単身者に喜ばれる
共用部の清掃や管理の強化 → 物件全体の印象が良くなり、安心感につながる
家賃アップ時に大切なことは、まず自分の物件の付加価値を高めるということが
大切だということです。
5. サービス業の発想を経営に活かす
私は税理士事務所としても、不動産オーナー様をサポートしています。
コロナ禍のときに会計ソフトを全社クラウド会計に切り替え、
インボイス対応も見据えたサポート体制を整えました。
当然にコストは上がりましたが、それをお客様に転嫁することなく
最新サービスを提供し続けた結果、満足度が上がり、
報酬増額を快く受け入れていただけるケースが増えました。
不動産経営もまったく同じです。
「経費が増えたから家賃を上げる」のではなく、「
入居者に満足していただける改善をしたから家賃を上げる」。
この発想の転換が、長期的に選ばれる経営につながります。
6. まとめ
単なるインフレ対応ではなく、**「入居者にもっと喜んでもらうために何をすべきか」**という
視点で家賃アップを考える。
それこそが、不動産オーナー様にとって持続的な賃貸経営の鍵になるのです。
令和7年9月19日 税理士 髙島聖也